裁量トレードのEA化には限界があることを知っておくべし
裁量トレードをやっている方で、「この裁量トレードの売買ロジックを自動売買(EA)化したい」とおっしゃる方が結構います。
依頼されたものを作ってお渡しすると、結果の悪さに愕然とされます(笑)
主に3つの理由が考えられます。
- 人間は見たいものしか見えない
- EA化する際に割り切る部分が発生する
- 暗黙知が隠れている
これらについて私なりの見解を述べます。
人間は見たいものしか見えない
人間が売買ロジックを検証すると、どうしても自分の都合の良いチャートしか見えません。
「見ない」ではなく「見えない」のです。その売買ロジックにとって都合の悪いチャートは無意識に飛ばれてしまうようです。
だから、自分が目視で検証する時は非常に優秀な結果を残すのに、EAに検証させると無残な結果になるのです。
EA(コンピュータ)には感情が無いですからね。EAは良くも悪くも言われたことを淡々と実行します。
その結果、都合の悪い部分が露呈してしまうわけです。
EA化する際に割り切る部分が発生する
裁量トレードの売買ロジックは完全には定量的に定義されていないため、EA化する際にどうしても割り切る部分が発生します。
例えば、移動平均線のゴールデンクロス。
「ゴールデンクロスはゴールデンクロスだろ?」と思われるかもしれませんが、EAにゴールデンクロスとは何かを定義してあげなければ、EAは判断できません。
一般的な定義は、「2本前の短期移動平均線が2本前の長期移動平均線より下に位置し、1本前の短期移動平均線が1本前の長期移動平均線と同じかそれ以上に位置している」となります。
上とか下に位置するというのは、0.1pipsでも満たせば成立します。一見、チャートを見ただけではクロスしているようには見えなくても、です。
ゴールデンクロスを上記の通りに定義したら、EAは問答無用で「これはゴールデンクロスだ」と判断します。
この割り切りが積もり積もって、期待した成績を残せない結果に繋がるのです。
暗黙知が隠れている
トレーダーが「売買ロジックを完璧にルール化できた」と思っていても、実際にはそのトレーダーの暗黙知が形式知化されていないケースもあります。
依頼された通りのEAを作ってお渡しすると、「なぜここでエントリー(エグジット)しているのか?」と聞かれることが時々あります。「依頼された内容がこうだから、こういう理由でエントリー(エグジット)しています」とお伝えすると、「この場合はこうだから、エントリー(エグジット)しないで欲しい」と言ってこられます。
私も人の子ですから、「いや、そんなこと一言も書いてないし、聞いてないし…」と思っちゃうことがあるわけですが、まさにこれが暗黙知が隠れている証拠です。
その人にとって当たり前になり過ぎていることは、得てして言語化されません。
この暗黙知のせいで、EAの成績が芳しくなかったります。
この問題については相当な時間をかけてコミュニケーションを重ねることで大体解決できます。ただし、依頼者が悪かった結果ときちんと向き合える場合に限りますが。