ファンドや各種証券の知識がないと読解困難
「天才数学者、ラスベガスとウォール街を制す(下)」を読んでみました。
数学者であり、ギャンブラーであり、ヘッジファンドマネージャーでもあるエドワード・O・ソープ氏の自叙伝の後編です。
前編(上巻)と毛色が随分と異なりました。前編はソープ氏個人の歴史という印象(主観要素)が強かったのですが、後編(下巻)は客観的な話が紙面の多くを割いています。
ファンドや各種証券にある程度明るい人を想定しているためか、上巻に比べて難易度は高めです。
読解できるかどうかは、読者の知識レベルに依存するところが大きいです。読み手を選びますね。
私は概要程度しか理解できませんでした…。
さて、本書中盤までを拙い理解で要約してみたらこうなりました。
- 出る杭は全力で打たれる。政治的思惑の渦の中で。
- 投資詐欺はどこの国にもある。うますぎる話には要注意。
- 市場は効率的ではなく、歪みが必ず存在する。だって人間だもの。
- インデックス投資、これ最強なり。
中盤以降は客観的な話が独立した粒度で書かれています。一話完結型と言いましょうか。そんな感じの構成です。
上巻の終わりではソープ氏が立ち上げたファンドが大儲けという感じでしたが、下巻の始めには、色んな人間の黒い部分のせいで、ファンドが潰されます。
人間って醜い生き物です。ことお金のことになると特に。
それでも諦めずにエッジを見つけては投資して大儲けしてという話が続きます。その過程でファンドとか詐欺師とかのエピソードが書かれます。
息子もいつの間にか優秀な投資家になっているようです(笑)。
その後は、お金持ち・複利、市場の効率性、インデックス投資とかの資産運用、学校への恩返し(これ必要でした?)、金融危機、教訓といった投資全般の話が著者の目線で語られます。
紙面が足りないからコンテンツを付け足すよう出版社から指摘されたのか、自叙伝だから著者が書きたかったことを全部書いた結果なのか分かりませんが、下巻の中盤以降は失速感がありました。
単に私の知識不足なだけかもしれません。下巻の方がAmazon評価高いですし(2019/11/3現在)。
知識のある方には下巻は勉強になると思います。私のような凡人には上巻の方が楽しく読めるでしょう。
それにしても頭が良いって羨ましい限りです!!
教訓その1 市場は非効率的だからこそ勝ち目がある
完全な効率的市場と実際の市場の特徴の対比、そこから得られる市場に勝つための4つの条件は必見です。まるっと引用させていただきます。
完全な効率的市場の4つの特徴
特徴1
すべての情報は即座に大部分の市場参加者が手に入れられるようになる。
特徴2
大部分の市場参加者はお金に関して合理的である。たとえば、ほかの条件に違いがないなら、常に少ないお金より多いお金のほうを好む。
特徴3
大部分の市場参加者は手に入る関連情報を即座に評価し、すべての証券についてその時点で適正な価格を判断できる。
特徴4
新しい情報が出れば、市場価格は新しい適正価格へと即座に変化し、価格が変化するあいだを利用した取引で超過リターンを得ることは誰にもできない。
実際の市場の4つの特徴
特徴1
情報の中には、たまたま正しいときに正しい場所にいた一握りの人たちにまず伝わるものがある。ほとんどの情報は、まず限られた数の人たちの耳に入るところから始まり、それから段階を踏んで幅広くたくさんの人たちに拡散する。拡散にかかる時間は、数分から数カ月まで状況によってさまざまだ。情報に反応して最初に行動を起こした人たちがそれで利益を確保する。ほかの人たちは何も得ないか損をするかのいずれかだ(ノート:内部者が情報を初期の段階で利用するのは、情報の種類、入手の仕方、利用の仕方によって、合法であることも違法であることもある)。
特徴2
お金のことになると、私たちはそれぞれみんな、限られた形でしか合理的でない。私たちの中には、ほとんど完全に非合理な人から、ほとんどどんな行動をするときでもお金の面では合理的であろうと努力する人まで、いろんな人がいる。現実の市場では、参加者の合理性にはかぎりがある。
特徴3
市場参加者は典型的に、証券の適正価格にかかわる情報の一部しか持ってはいない。情報を処理するのにかかる時間も、情報を分析する能力も、そのときどきの状況で一般的に大きく異なる。
特徴4
情報1つに対する反応として現れる売買注文は、時には数秒のうちに洪水のように押し寄せ、そういう場合には価格は新しい水準へジャンプする。価格の推移にはギャップなどが生じる。しかし、だいたいの場合、ニュースに対する反応は数分、数時間、数日、あるいは数カ月にわたって徐々に進む。その点は学界の文献でも報告されている。
市場に勝つために必要な4つの条件
条件1
よい情報が早く手に入る。手に入った情報が十分によい、あるいは十分に早いことは、どうすればわかる?間違いないと思えないなら、おそらくいずれでもない。
条件2
自制心を持った合理的な投資家である。論理と分析に基づいて動き、売り文句や思いつき、情緒に動かされない。自分にエッジがあるかもしれないと思っていいのは、筋の通った理由があって、自分で考えた反証に耐えられた場合だけだと仮定する。自分にはエッジがある、大きな自信をもってそういえないかぎり、賭けに出てはいけない。バフェットの言うとおりだ。「おいしい球が来たときだけバットを振ればいいんだよ。」
条件3
優れた分析の方法を見つける。この本に書いてきたように、私に実績をもたらした方法には、統計的裁定取引、転換社債のヘッジ戦略、ブラック=ショールズの公式、そしてブラックジャックでのカード・カウンティングがある。勝てる戦略には、ほかにも、才に恵まれた一握りの人ならできる優れた証券分析や、優れたヘッジファンドの手法などがある。
条件4
証券の価格が歪んでいることがわかっていて、人々がそれを利用しているなら、彼らの取引で歪みは消える傾向にある。ということは、いちばん早く取引を始めた人がいちばん儲け、その後に続く取引で価格の歪みは減ったり消えたりするということだ。チャンスを見つけたら人々が群がる前に投資しよう。
この後の見出しに「情報を先に手に入れれば、食物連作の上に立てる」という記述があり、これには思い当たる節があります。
数年前のことですが、とある仮想通貨を一般公開前の状態で買う機会があり、一般公開直後に売り抜けることで1年弱で倍近くの利益を得ることができました。
「どうすれば質の良い情報を他の人より早く得られるか?」というのは、コネ・人脈が大きく左右すると思っています。
良いコネ・人脈を築くには、自分自身がそれだけ価値ある人間になるしかありません。
「あなたには価値がある」とその人に思ってもらえなければ、わざわざあなたに良い情報を提供しようとは思わないでしょう。
結局のところ、自分の刃を常日頃から磨いておくしかありません。
教訓その2 資産運用するならインデックス投資
資産運用するならアクティブ投資ではなく、インデックス投資(日経平均株価やTOPIX等と連動している投資信託という理解)が良いそうです。
なぜ?というところがイマイチ理解できませんでしたが、興味のある方は「インデックス投資」でググってみてください。
いっぱい出てきますから。
iDeCoを節税目的で最近始めたのですが、上記のような商品(ネットで調べてこれが良いよ!という商品を見繕っただけの素人丸出しスタイル)を選んでいるので、私もインデックス投資していると言える…のかなぁ。
本書内で複利の力についても触れられていて、複利の力を最大限発揮させるためには1日でも早く始めることですね。
眠らせているお金があるなら、本当はそれらをできるだけ早くインデックス投資に回した方が良いんだとは思います。
ただ、詳しく調べる時間的余裕がないのが辛いところです。