天才にしかできない芸当
「天才数学者、ラスベガスとウォール街を制す(上)」を読んでみました。
数学者であり、ギャンブラーであり、ヘッジファンドマネージャーでもあるエドワード・O・ソープ氏の自叙伝の前編です。
冒頭100ページ位を使って幼少期から学生時代までのことを詳細に書いています。
生まれながらにして天才であることがよく伝わってきます。そして実践主義者。
天才って2~3才の頃の出来事もよく覚えているんですね。
ただ、ぶっちゃけ詳細すぎて「ソープ氏の大ファンです!」という人でもない限り、冗長に感じました。
自慢話にみえる内容も多く(恐らく著者にその意図はないでしょうが)、若干鼻につきましたので書籍の途中途中は読み飛ばしました(笑)。
カジノのブラックジャックに目を付けたところからが本論です。
当時、学者の間でもカジノには絶対に勝てないと言われていました。
そこにただ一人「そんなことないはずだ」と考えたのが著者です。すごい自信です。
確率論をはじめとした数学を駆使しつつ、実践で何度も試行錯誤することで、ついにブラックジャックを攻略しちゃいます。
ブラックジャックで勝ちまくって、その内容を書籍にして、カジノ界をひっかき回します。
その後、情報理論の父と呼ばれているクロード・シャノン氏と共同でルーレットも攻略します。
それだけに飽き足らず、バカラまで攻略しちゃいます。ほんとやりたい放題ですね。
最後には飲み物に麻薬を入れられた上に、車のブレーキを壊され、危うく殺されかけます。
これでカジノ編は終息を迎えます。
そして、次に目をつけたのが、ウォール街の株式市場や先物市場等。
最初はボロ負けですが、ギャンブルで得たノウハウと数学の知識をフル活用することでこちらも徐々に攻略していきます。
途中、世界の投資王のウォーレンバフェット氏とも出会います。登場人物が豪華すぎる!
数学を活かしたトレード集団をクオンツと言いますが、著者はその始祖にあたります。
ヘッジファンドの会社を立ち上げ、順風満帆に勝ち続けて、大金持ちになったところで上巻は終わります。
最終的には29年間の四半期負けなしという偉業を成し遂げたそうです。凄すぎです。
下巻も楽しみです。
教訓その1 ヘッジファンドとは割安な銘柄を買い割高な銘柄を売ること
ヘッジファンドが何なのか以前から疑問だったのですが、分かりやすい説明が本書内にありました。
割安だと思う株の銘柄を買うのに加え、割高だと思う銘柄を空売りして、リスクを抑制する。つまり「ヘッジ」する、ということだ。空売り、つまりショートした投資家は価格が下がれば利益、上がれば損失を手にする。空売りできれば投資家は下げ相場でも儲けることができる。
関係が深い2つの証券で、なのに比べてみると価格に歪みがある組み合わせを見つけ、それら2銘柄を使ってリスクを抑えた投資を構築する。そんなヘッジを構築するには、2つのうち相対的に割安な証券を購入し、同時に、相対的に割高な証券を空売りして、不利な方向への価格の変化を相殺する必要がある。そうした2銘柄の価格は同じ方向に動きがちだから、そうした2銘柄を組み合わせればリスクを抑制しながら大きめのリターンを手に入れることができると私は考えた。
両建てのこともヘッジと言いますし、合点がいきました。
ただ、ヘッジすれば確かにリスクは抑制できますが、同じ方向に動くということは、片方が利益になるともう片方は損失になるということですよね。
その利益と損失の合計がプラスになるような組み合わせ、仕掛け/手仕舞いタイミングを見つけろってことでしょうか。
FXでいえば、AUDUSDとNZDUSDの組み合わせみたいな感じですかね。
FXの場合、両建てするとスワップ合計がマイナスになることが殆どですから、ポジション保有期間は重要なパラメータになりそうです。
教訓その2 周りの声に惑わされずに自分で確かめる
著者は何でも自分で考えて行動する実践主義者です。
他人が「それは無理だから。証明済だから。」と言っていても、著者はそのまま真に受けずに、きちんと自分の頭で考えて、確認してから答えを出していました。
その姿勢は重要ですね。